2024.03.26
劇場版『SHIROBAKO』特別記念上映会「変な話、1周年記念舞台挨拶」オフィシャルレポート(後編)
続いては事前に募集されたファンの方たちからの質問コーナーに。
質問 その1)
劇場版で、絵コンテでは元々存在していたけどカットしたシーンや、 作画までされていたけどカットされたシーンがあると聞きました。それらのシーンを追加した『劇場版 SHIROBAKO ディレクターズカット版』を観てみたいです!ぜひとも制作していただけませんか!?
脚本の時は30分くらいカットしたんですけど、どこをカットしたのか今ひとつ覚えてなくて(笑)。さっき控室でも話したんですが、遠藤(亮介/CV:松本忍)はパチンコにハマっている設定でした。でもいくらなんでもそれはダメでしょということで、ゲームセンターに変わりましたね。初期では吉祥寺をウロウロしているシーンがあったんですよ。大体カットした部分はカットしてよかったと感じることが多いです。ほかの人にガッツリ切ってもらった方がテンポ良くなったりすると思います。(水島監督)
遠藤のこと、もっと嫌いになっていたかもしれない…。(木村さん)
見たいとは思わない…カットされてよかったって思うことあるんですね(笑)。(佐倉さん)
ディレクターズカット版ですが、今回は意味があって切ってるので、それはないかなと。遠藤の名誉のためにも(笑)。(永谷さん)
質問 その2)
変な話、 テレビシリーズはムサニがのぼり調子のところで終わったはずなのに劇場版は暗い雰囲気から始まってびっくりしました。テレビシリーズと劇場版の間の話も見てみたかったなと思ったのですが、キャストの皆さんは間にあったかもしれないこんな話も見てみたかったというのはありますか?
タロー(高梨太郎/CV:吉野裕行)と平岡(大輔/CV:小林裕介)が独立して2人がチームを組むことになった経緯の話は見てみたいです。(木村さん)
私は絵麻と久乃木さんが同居することになった経緯は見て見たいかも。(佳村さん)
いい感じで終わったテレビシリーズを受けての劇場版は、まず一度、皆で落とし穴に落ちてもらおうと思いました。まずはそこからだろうと。もちろんその中間を作ろうと思えば作れるのですが、多分遠藤の闇落ち、いかにダースベイダーになったかとか、いかに山田(昌志/CV:浜田賢二)が調子に乗っていったかとか、そんな楽しくない話が多くなりそうな気がします。(水島監督)
質問 その3)
アニメ制作を題材にしているからこそ、この作品に参加後アニメ制作に関わり意識が変わった点はありますか?変わった点はどこですか?視聴者として、出演・制作者側として別々に答えていただけると嬉しいです。
私が変わったということとは違うのですが、『SHIROBAKO』を経てアニメ制作ってこんなに共同作業なんだなとすごく印象に残りました。それまではもっといろんなクリエイターさんが個々にやったものの集合体みたいなイメージがあったんですけど、それよりも、もっと協力して作っていってるものなんだなと。(髙野さん)
特に『SHIROBAKO』はなんですけど、エンドロールなどに流れるクレジットが全員主人公のように思えてくるようになりました。キャラクターではないけれど、でも『SHIROBAKO』を作っているのはこの方々。今までなんとなく見てしまっていたクレジットが立体感を帯びて見えるようになりました。(大和田さん)
私もアニメ制作に対しては、言ってしまえばオートマティックなイメージを持っていたんですが、こんなにも躓くこともあれば、人間の感情のバイオリズムで引っかかることもある。意外と泥臭いところがあるんだと、より好感を持てました。(佐倉さん)
テレビシリーズの放送後、業界の人たちからも今まで何となくでしか知らなかった、自分のセクション以外のアニメ制作のことを知ることができたという意見を多くいただきましたね。(永谷さん)
質問 その4)
アニメだとアンデスチャッキーのキャラで武蔵野動画の過去を振り返る話が大好きでした。『SIVA』クライマックスでもヘドウィック、ラウル、スイカ、チーク、ハートフルを皆さんが兼ね役で演じていまし たが、あの場面はあおいたち5人を投影した作りやアフレコだったんでしょうか?
5人皆さんで演じてもらおうというのは実は後で決まったこと。音響制作の方に「大丈夫そうですかね?」と聞いたら「大丈夫じゃないですか」みたいな感じだったので、じゃあそれでいこうと。(水島監督)
私はラウルとアルテを演じたのですが、アルテはしずかとして、ラウルは私自身が少年役を演じることになったんです。実はある意味ずかちゃんよりも緊張していました。(千菅さん)
と、このイベントならではの裏話を聞くことができました。
質問コーナーのあとは、写真撮影に。
会場の出入口からはロロの着ぐるみも登場し、ファンと一緒に監督、キャスト陣がいろいろなポーズで写真を撮っていました。
約1時間、ノンストップで行われたトークの時間もあっという間に終わりの時間に。
まだまだ話足りない、もっと聞いていたいと感じていたのはファンもキャスト陣も同じようでした。
最後の挨拶では、
4年、いや1年越しに舞台挨拶が叶い、こうして皆さんの前で宮井についてお話ができてとても楽しかったです。『SHIROBAKO』に出会ってからシステマティックに見えてたクレジットの名前の文字にも、その裏にある人間味が見えてきました。アニメ業界だけではなくいろいろな職業がありますが、作中で起こっていることは、多分身近に感じてもらえるのではないかと思っています。この作品を生み出してくださったスタッフの皆様に感謝。そしてまた皆さんにお会いできる日を楽しみにしています。(佐倉さん)
テレビシリーズの時は本当にまだぺーぺーで、初めてのメインキャストとして関わらせていただいた作品であり、私にとってとても思い入れのある作品です。『SHIROBAKO』で今井みどりが演じさせていただいたことによって、あらためてアニメってこんなに素晴らしいものなんだ。こんなに熱意を込めて作られているものだからこそ、小さい頃から私はそれを受け取ってこの業界に憧れたんだなと幸せを感じています。劇場版でいつもエンドロールのところで泣いちゃうんですよね。日々どんなことがあっても何か失ってもどこかで躓いても、にっちもさっちも行かないみたいな時があっても、とにかく足掻いて前を向いて進んで歩いて行った先に何かひとつ奇跡が起きたり、何かを掴めるかもしれないという温かいパワーみたいなものを『SHIROBAKO』に登場する人たちから受け取って、本当に大好きな作品です。たぶんここに集まってくださっている皆様もそうやって、『SHIROBAKO』のパワーを感じ取っていただいて、何かあった時に思い出してくださっていると思うので、これから先も『SHIROBAKO』を思い出してずっとずっと応援していただけたらなと思います。たくさん話したいことはあるけれど、またどこかで会えると信じております。(大和田さん)
1年前というか4年前。本当は舞台挨拶がたくさんある予定でした。こうやって上映後の皆さんの顔を見ることが私にとっての希望で、あの時の夢でした。でもそれが叶わなくて、もうずっとこういう機会もないだろうなと正直、諦めていたところがありました。でも『SHIROBAKO』という作品がとても愛され続けているからこそ、こういう機会があり、それが本当に嬉しいです。公開当時、コロナで絶望を感じていながらも劇場版『SHIROBAKO』を上映初日に見に行って、閑散とした映画館の中ででも「きっとこの物語はいつかいろんな人に見てもらう機会がいっぱいあるはずだ」と信じていました。こうやって実際に皆さんに会えたことが、とっても嬉しいです。これからもこうやって『SHIROBAKO』のことを語れる機会があったらいいなと願いながらも、私も登場人物たちと一緒に、美沙と同じようにジタバタ声優をやっていこうと思います。(髙野さん)
今日は拙い言葉ではありましたが、こうしてステージ上から劇場版を踏まえての自分の気持ちや、いろいろなことを皆さんに受け取ってもらえて嬉しかったです。直接お話ししてるわけではないですけど、こうして皆さんの表情とかを見てると、「わかる!」みたいな気持ちになられているんだなと感じる瞬間がありました。『SHIROBAKO』は皆さんもそうだと思うんですが、何回見ても見る時の自分の経験だったり、感じ方によって全然違う響き方をする作品。自分自身もこの4年の間にものすごく変わって、とても不思議な気持ちになるんです。おいちゃんが丸川(正人/CV:高木渉)元社長に「道しるべになるような、そんな作品を期待している」と言われ、ハッとするシーンがありますけど、自分も誰かしらの道しるべみたいになっているんだろうか? これって1年前とかそんなこと考えてたか? とか。どんどんひとり言になっちゃうんですけど…そういういろんなことを思いながら、その一端を皆さんと共有できたんじゃないかなと思います。また機会がありましたら、そういう気持ちを『SHIROBAKO』を通して共有できたらと思います。(千菅さん)
劇場公開の舞台挨拶が中止になった時、みんなでいつか何かできたらいいねって話していたんです。でも正直できないかもという気持ちもあって。だから本当に4年経った今でもこんなに満員で、しかも本当に皆さんと会えているんだと嬉しさを実感しています。4年経ってもこんな風に語れる機会がある作品がすごく恵まれているなと思うし、来年でアニメ放送から10周年なんです!(佳村さん)
違うよ。今年だよ!! 今年の10月に10周年だよ!でも秋、冬クールだったから、2025年も10周年の期間だ(笑)。(木村さん)
そうでした!ごめんなさい…。10周年になって、もしイベントもなさそうなら、ライブ配信でもやろうかと話していたんですが、皆さんの声で今日の舞台挨拶も実現できたと思うので、例えば今年10周年なので「ぜひオールキャストでのイベントを見たい!」と言ってくださればできるかもしれない。それも期待しています。(佳村さん)
皆のコメントでウルウル来てたんですけど、笑い涙に変わってしまうとは思いませんでした(笑)。オープニングでもお話したんですが、私は主役ということもあり、こうやって皆さんの前で劇場版の『SHIROBAKO』について話す機会は何回かいただいていました。でもやっぱり皆で舞台に立ちたかったという思いがすごくあって。コロナになって本当に本当に残念で、ネガティブな気持ちにもなったけど、全員で励まし合い、今日という日を迎えられました。それは本当に永谷さんはじめスタッフの皆さんでこういう計画を立ててくださったことと。そして『SHIROBAKO』を好きだって思ってくださっている皆さんのおかげです。本当に感謝しています。るるちゃんも言ってましたけど、今年が10周年なわけですよ!なのでこれに終わらず、『SHIROBAKO』といえば伝説的なイベント、「『SHIROBAKO』秋祭り」がある。まさに10月で10周年ということは、めちゃめちゃぴったりなんじゃないかと思っているんですが、どうですか永谷さん!(木村さん)
何か考えていこうね(笑)。(永谷さん)
今日は遠藤さんの話ばかりで、まだまだ好きな話をしたい。『SHIROBAKO』のここがいいっていう話をもっともっとしたいので、そういう場とか、それ以外にもたくさんたくさん、これからも色々『SHIROBAKO』についてみんなで話したりできる場があることを期待してます、永谷さん。皆さんも是非是非それが実現できるように、これからも好きでいていただけると嬉しいです。(木村さん)
コロナで大変だったというのはあるんですけれど、私はちょっと前向きに捉えていて、あれ1ヶ月2ヶ月もしずれてたら上映中止ですよね。上映できたのはよかったと思っています。でも実を言うと、まさか劇場版をやるとは夢にも思わなかったんです。劇場版が2020年公開でしたが、2016年にとあるプロデューサーから「焼肉を食べに行こう」と誘われたんですよ。そしたら「『SHIROBAKO』の続きを作らないか」と。騙された!って感じだった(笑)。ただ毎回テレビシリーズの時も劇場版の時も大体言いたいことは全部言い尽くしたと言いつつ、全然足りない。今はなかなかお金集め大変ですが、去年YouTubeで1ヶ月無料配信をして、再生数100万超えましたよね。約2時間のものが100万再生ということは、これ、お金集まるんじゃないですかね⁉︎(水島監督)
監督、そのあたりは裏で話しましょう(笑)。(永谷さん)
もちろんテレビシリーズ、劇場版、スピンオフという考え方などいろいろあると思います。タローと平岡の話、個人的に絶対お金は出ないと思うけど、「ミムジーとロロのやさぐれ大冒険」みたいなものも見たいなと思っていて。で、その時は、より深い落とし穴を用意して、さらに底には針が刺さっていて。そんな穴から這い上がるようなもの。いろいろ文句を言いたいアニメ業界ではありますけれど、そこはなるべく明るくできればと思いますので、どうかピーエーワークスと永谷さん、お金集めをよろしくお願いします!今日はどうもありがとうございました。(水島監督)
と、10周年のイベントや次回作への夢や希望も飛び出しつつ、最後は木村さんの掛け声で、定番の決め台詞「どんどんドーナツ、ドーンと行こう!」の大合唱で大盛況の上映会&舞台挨拶イベントは幕を閉じました。
(文・パブリシティーライター 豊田直顕)